こんにちは。日本語教育養成講座ニューヨークアカデミー福岡大橋校の緒方です。
ようやくエアコンに頼り切ることなく過ごせる気候になりました。
朝夕は窓から入ってくる涼やかな風に秋の訪れを感じます。
さて、今日は日本語の文字について書いてみようと思います。
日本語学習者にとって日本語を学ぶということは、3種類の文字を学ばなければならないということです。
「漢字」「ひらがな」「カタカナ」この3種類を学ばなければ日本語は読めません。これが日本語習得の最大の壁かもかもしれません。
では、どうして日本語には3種類の文字があるのでしょうか?
そもそも、かつての日本には漢字しか文字はありませんでした。
もともと書き言葉を持っていなかった日本語に最初の文字として中国から漢字が入ってきたのはおそらく1世紀頃のことであろうと言われています。そこから日本における漢字の歴史は始まりました。
初めはすべて漢文で書かれていたものが、読むには難易度の高い漢文に代わって万葉仮名が使われるようになりました。万葉仮名とは漢字の音を借用して日本語の話し言葉と調子を合わせた表音文字のことです。簡単に言えば漢字を使って日本語の音を表す「当て字」のようなもので、これを使って話し言葉を文字に起こすことが容易になり、8世紀はじめに「古事記」や「日本書紀」が完成しました。
ひらがなはこの万葉仮名をくずして簡単にした文字で9世紀頃から使われるようになりました。ひらがなは主に私的な場面で、あるいは女性によって使われる文字とされました。「源氏物語」や「枕草子」などの女流文学が盛んになったのもひらがなが生みだされたことによるものです。
一方、カタカナは漢文を読むときの補助記号として、漢字の一部を使ってつくられました。主に公文書を読んだり書いたりするときに利用され、僧侶や貴族の間で使われました。
このようにそれぞれ異なった側面から発展したため両方が生き残り、ひらがなとカタカナ、そして漢字の三種類の文字が日本語には存在し、現代まで使われ続けているのです。
日本語がもし「ひらがな」だけだったらどんなにいいのかなんて思う日本語学習がいるかもしれませんね。
では、ひらがなだけで書かれた次の文はどう読むでしょう?
「ははははながすき」「にわにはにわにわとりがいる」
ひらがなだけでは何を言っているのかよくわかりませんよね。
漢字を入れると、
「母は花が好き」「庭には二羽鶏がいる」
どうでしょう、意味はすぐに理解できます。
以前、授業でひらがなを教えていた時のこと、やっとひらがなを覚えたアメリカ人のPさんが、自分の書いたひらがな文を見て、「これじゃあ、読めない!どうして日本語は英語のように単語の間にスペースを空けないんだ」と言って頭を抱えたことがありました。確かに日本語はスペースを空けず続けて書くので、ひらがなだけだと何と書いてあるのかの判断は難しいです。だからこそ漢字を使う必要があるのでしょう。同音異義語を多く持つ日本語は漢字の力を借りて意味を区別しているのです。
私たちの祖先は場面に応じて漢字を進化させてきました。3種類の文字を持つのは唯一日本語だけだそうです。この貴重な日本語の文字文化を絶やさず後世に残していくことは日本人の使命かもしれませんね。