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2017年5月12日

簡単な文型ほど教えるのはたいへん…

こんにちは。日本語教師の宮﨑です。
NILSでは、初級のテキストに『みんなの日本語Ⅰ』を使用しています。みんなの日本語1課では、「N(名詞)はN(名詞)です」の文型から教えます。要するに「私は~です」の文です。意外と簡単な文型なので、こんなの間違える人はいないだろうと思うかもしれませんが、実は間違いが多いのです。

では、学生はどのような間違いをするのでしょうか。学生は、「私は~さんです」とよく言います。自分の名前を言うときは、「~さん」はつけませんよね。意外とこの間違いが多いのです。

学生に文法を教えるときは、きちんと教えなければいけません。「私はミラーです」「私は佐藤です」など、例文だけ出して、「はい!リピートしてください!」だけではただその文をリピートしているだけで、意味や使い方を教えていることにはなりませんし、学生には伝わりません。文法を教えるときには、いつ、誰が、誰にたいして、どこで、どのような場面で使用するのかなども教えなければなりません。それを理解して、初めてきちんと使えるのです。ですので、きちんと意味を伝えていないと、先のように、「私は(自分の名前)さんです」などといった文を言ってしまうのです。

また、文法を教えるときにもう一つ大切なことがあります。それは、文の構造です。簡単に言うと、文の形です。例えば、先ほどの文型で言えば、「は」の前に名詞がはいり、「です」の前にも名詞が入るということです。

1課はそれほど言うこともありませんが、課が進むにつれて、文が複雑になってきます。
「て形」や「た形」など、フォームもたくさん出てくるので、この文型はどのフォームと一緒に使うのかも教える必要があるのです。
意外かと思うかもしれませんが、実は、単純な文法のほうが難しいのです。

日本語学校は直接法で教えるところが多いです。直接法とは、学習言語を学習言語で勉強します。例えば日本語を日本語で習うということです。未習の文法を既習の文法や語彙で教えます。ですので、課が進んでいないということは、勉強している語彙や文法も少ないので、説明に使える語彙や文法が少ないということなのです。

私はこんなふうにこの文法を使っているからとか、こんな意味だったよね、と適当に判断して、学生に間違ったことを教えるわけにはいきません。私たち日本語教師がきちんと教える内容を理解しておかなければ、教えることはできません。当たり前のことですけどね。
ですから、どんなに単純な文法項目を取り扱う授業でも、授業に入る前は、しっかりと授業準備することが大切なのです。