スタッフブログ

2017年3月2日

「うれしい」と「幸せ」

こんにちは。日本語教師の平尾です。
先日、初級クラス(みんなの日本語Ⅱを勉強中)で「~そうです」という文型を使った会話練習をしているときに、学生から

『「うれしいと幸せ」は同じ意味ですか。』

と聞かれました。似たようなシチュエーションで意味が似ている言葉を使ったからでしょうね。「うれしい」と「幸せ」はそれぞれ英語に訳すといろいろ出てきますが、どちらもhappyと訳せますよね?このことからも疑問を持ったのではないかと思います。

<その日の授業の練習文>
練習文①
A:あの二人、幸せそうですね。
B:ええ、先月 結婚したんです。

練習文②
A:うれしそうですね。
B:ええ、実はきのう結婚を申し込まれたんです。
A:そうですか。それはよかったですね。

その違いについてその場で説明しようと思いましたが、もしかしたら、もっとわかりやすい説明、学生が「うれしい、幸せ」をうまく使えるようになる教え方があるかもしれないと思い、その授業では即答せず一旦持ち帰ることにしました(2/8ブログ “慌てちゃいけない…” も読んでください♪)。

早速、どうやったら学生にすぐパッとわかってもらえるのか、実際の会話の中でその言葉を自然に使えるようになるのか、その教え方を考えてみました。

そこでまず、辞書でそれぞれの意味についてもう一度よく調べてみました。

<辞書に書いてあった内容>
*広辞苑
「うれしい」→ はればれと喜ばしい。こころよく楽しい。
「幸せ」  → 幸福。幸運。幸い。運が向くこと。

*類語辞典
「うれしい」→ 楽しく、喜ばしい。体験していなくても期待していたことが実現したときに感じる。
「幸せ」→ 満ち足りて心からよい気分に浸ること。

なるほど…。しかし、学生に辞書に書いてあることを説明しても、初級レベルでは語彙や文法に制限があるため、理解させるのは至難の業です。ですから、学生が理解しやすく、実際にうまく使えるような「場面」や「使い方」を提示して教える必要があります。

そこで、辞書で調べたあと、実際にどんな会話や場面、文で使われるのか、いろいろな場面を想定し例文をあげてみました。そして、それを整理し、他のトレーナー(講師)にも意見を聞いてみました。仲間の意見も参考にしながら、さらに整理し、どのように教えるかを考えました。
↓は私が考えた内容です。

1.学生への意味の説明

①「うれしい」は「~になったらいい」「~したい」と思っていたら、本当に「~になった。」「~できた」、そのときの気持ち。

②「幸せ」はうれしいこと、いいことがいろいろあって、幸せ。

2.考えた場面や例文 *いくつかピックアップして紹介します

①うれしい

宝くじが当たったら、自分のしたいことがいろいろできる。当たってほしい。
→ 500万円当たった。
→ 当たったときの気持ち:うれしい

②幸せ

宝くじで当たった100万円で海外旅行に行ったり、おいしい物をたくさん食べたり、欲しい物を買ったりした。
→うれしいこと、いいことがいろいろあって、幸せ

③不自然な使い方

×うれしい人生
〇幸せな人生

私は今回、このように考えました。でも、これが正解なのかどうか、すべての学生が違いを分かってくれたのか、まだ他に分かりやすく違いを伝えることができるのではないか、などなど、いろいろな教え方や考え方があると思います。

「うれしい」と「幸せ」の違いについて皆さんなら学生にどのように教えますか。
この2つの言葉の違いに限らず、よく似た言葉はたくさんあります。私たち日本人が何気なく使い分けている言葉や言い回しの違いを外国人にどうやって教えれば納得してくれるのか、日本語教師としての腕の見せ所(?)ではないでしょうか。