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2015年1月19日

発音

こんにちは。日本語教師の又木です。
”日本語を教える”というと、文法や漢字などの授業をイメージする人が多いと思いますが、実は日本語学校では文法や漢字以外にも様々なことを教えています。
私が日本語を教えている中で、最も難しいと思うのが「発音」の指導です。学習者の国に元々ない口の形や発音もあるため、どんなに時間をかけて指導しても、次に発音する時には元の発音に戻ってしまっていることが多く、一つの単語をきれいに発音させるのも一苦労です。
ネパールの学生は「さ」が「しゃ」、「つ」が「ちゅ」など拗音になったり、中国の学生は、な行とら行のどちらなのかわからなかったりなど、国によっても苦手な部分は様々なのですが、中でも拗音が入っている単語の発音は、どの国の学生も苦手な学生が多いようです。

最近では特に、「市役所」が言えない学生が多く、他の単語の発音がきれいな学生でも、市役所だけは何度指導しても、次に発音するときは「しゃくしょ」や「しやくそ」に戻っているパターンが多いので、上手に発音させられるようにどうやって指導するか、自分の中での課題になっています。

と、ここで話は少し変わりますが、わたしは普段初級の授業に入っています。先日、発音が上手と言われている中級の学生と話す機会がありました。その学生でも「市役所」がきれいに言えないのか、ふと疑問に思ったので、その学生に「市役所」と言ってもらうことにしたのですが…

私 「○○さん。“市役所“って言ってください」
学生 「え?!今からですか?」
私 「はい。今、言ってください。」
学生 「(ちょっと困りながら)わかりました」

そういって、駐輪場へ向かおうとする学生。

私 「ちょっと!どこへ行くんですか?」
学生 「え?市役所です」

私は市役所と「言って」欲しかっただけなのですが、学生は市役所へ「行って」と言われたのだと勘違いしたみたいで、発音が聞きたかったのに、まさかの出来事になってしまいました。

学生と会話していると、こうしたちょっとした勘違いで、お互いこうして欲しいという行動と別の行動をとってしまったり、どうしてそうなるの?とヤキモキしたりすることがありますが、後から思い返すとふっと笑えるようなエピソードばかりで、これは日本語教師にしか体験できないおもしろさなんだなと思います。