「日本語教育能力検定試験」にはどんな問題が出題されるのでしょう?実施要項には「日本語教育の実践につながる体系的な知識が基礎的な水準に達しているかどうか、状況に応じてそれらの知識を関連づけ多様な現場に対応する能力が基礎的な水準に達しているか」を確かめることが目的と書かれています。
試験構成については試験Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの3部構成となっており、平成30年度の出題では最後の1問を除きすべて選択問題でした。答案用紙はセンター試験と同じマークシート方式です。
「試験Ⅰ」は「原則として、出題範囲の区分ごとの設問」、つまり一つの知識項目ごとの単純な設問になっています。「試験Ⅱ」は音声による出題です。外国人学習者の発音例や、それを指導する教師役の音声を頼りに解く問題です。「試験Ⅲ」は「区分横断的な設問」により、教案作成や現場での指導場面を想定した出題となっています。
著作権の問題から、実際の出題をここに転載するわけにはいきませんので、平成30年度をモデルに出題内容が理解できるような類題を提示して具体的にどんな問題が出題されるのかを見てみましょう。
試験Ⅰ-問題1
例【テ形の音便化】
1 書く
2 探す
3 噛む
4 しゃべる
5 飛ぶ
※「書く」→「書いて」とテ形にしていくと、2以外はすべて「イ音分・撥音便・促音便」のいずれかになりますね。
答え:2
例【音節数】
1 当選
2 上陸
3 進歩
4 劣化
5 負担
※「上陸」は(ジョウ・リ・ク)で3音節、その他は(トウ・セン)(シン・ポ)など2音節です。
答え:2
試験Ⅰ-問題2
例【どちらのほうが多いか比べろう。】
1 明日は早く起きろう。
2 机の配置を変えろう。
3 濡れた服を着替えろう。
4 明日はきっと晴れろう。
※「比べろう」は正しくは「比べよう」、意向形の「~よう」です。順に置き換えていくと「晴れよう」は違いますね。
答え:4
試験Ⅰ-問題3
例【日本語の歴史】
日本語の歴史的変遷を見ると、中世を境に「知らぬ。悲しみたり。」などの言い回しを使う( ア )と、「知らない。悲しんでいる。」などの言い回しをする( イ )のへと変化した。この間の変遷の中で、①終止形と連体形の合流や二段活用から一段活用への変化、「係り結び」の消失などが見られるが、②係助詞と呼ばれていたもののいくつかは、現代でも使われている。
例 ( ア )( イ )に入る組み合わせは次のうちどれでしょう。
1 ア 口語 イ 文語
2 ア 上方言葉 イ 東京言葉
3 ア 古代語 イ 近代語
4 ア 古語 イ 新語
※日本語を、中世を境に2つに分ける際は、前者を古代語、後者を近代語と言います。
答え:3
例 「終止形と連体形の合流や二段活用から一段活用への変化」の例は次のどれですか。
1 「捨つ」→「捨つる」→「捨てる」
2 「捨つる」→「捨つ」→「捨てる」
3 「取るる」→「取れる」→「取る」
4 「取れる」→「取るる」→「取る」
※文語文法の上二段・下二段活用は、口語化する中で上一段・下一段へと変化して、連体形と終止形がお感じ形へとなるのですが、「文語の終止形」→「文語の連体形」→「口語の終止形/連体形」の順に並んでいるのは1だけです。
答え:1
例 下線②の例を次から選んでください。
1 接続助詞の「か」
2 取り立て助詞の「も」
3 格助詞の「は」
4 並立助詞の「ぞ」
※係助詞との関係はともかく、上の例で助詞の種類として正しいのは「も」が取り立て助詞ということだけです。接続助詞に「か」はありませんし、格助詞に「は」はありません。取り立て助詞の「は」ならあります。同様に終助詞の「ぞ」なら存在しますが、並立助詞にはありません。
答え:2
試験Ⅰの問1から3までを紹介しましたが、いかがでしょうか。かなりたくさんの用語を理解しなければならないようです。ここまでの設問自体はまさに「基礎的な水準」です。講座の授業や参考書でしっかり学習して、過去問題の演習を繰り返せば対処できそうな印象ではないでしょうか。
次回に続きます。
※紹介した問題は、平成30年度日本語教育能力検定試験の問題を真似て作成したもので、実際に出題された問題とは異なります。
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